概要
適用事業所に勤務する役員や従業員(被保険者)およびその家族(被扶養者)が、業務外で病気・ケガ・分娩・死亡した場合に保険給付を行う制度です。健康保険には2種類あります。
保険者 | 対象者 |
全国健康保険協会(協会けんぽ) | 主に中小企業の役員や従業員およびその家族 |
健康保険組合(組合健保) | 主に大企業の役員や従業員およびその家族 |
適用事業所
法人の事業所は従業員の人数に関係なく強制適用事業所となります。
個人の事業所は原則として従業員5人以上の場合に強制適用事業所となります。
被保険者と被扶養者
被保険者は適用事業所に使用される人をいいます。
被扶養者とは被保険者の家族で、同居別居に関わらず生計維持関係にある一定の要件をみたした人をいい、年収130万円未満(60歳以上は年収180万未満)で被保険者の年収の1/2未満であることが必要です。
FP1級・CFP®の追加知識
年収については、公的年金や企業年金、給与等の収入は税引前の金額で判断される。
保険料
被保険者の給与を所定の等級表に当てはめて求めた標準報酬月額および標準賞与額に対して所定の保険料率を乗じて計算します。
保険料は被保険者と事業主が1/2ずつ負担し、事業主が被保険者分も含めて納付義務を負います。当月分の保険料は翌月分の給料から徴収されます。
保険給付
療養の給付
業務外の事由による病気・ケガについて、病院や薬局などで療養の給付が行われます。被保険者本人およびその家族が診療や薬剤の提供を受ける場合、医療機関等の窓口で一定の自己負担額を負担しますが、被保険者本人およびその家族(被扶養者)の負担割合は原則として3割です。
高額療養給付
1ヶ月間(1日〜月末)に医療機関の窓口で支払う自己負担額が、一定の自己負担限度額を超えた場合、その超えた金額が高額療養費として払い戻されます。
70歳未満の人は、あらかじめ保険者から入手した限度額適用認定証を医療機関に提示すれば、医療機関の窓口での支払い上限は自己負担限度額となります。
厚生労働大臣が指定する先進医療に係る治療や入院時の食事代・個室差額ベット代金などは保険が適用されない部分であるため、高額療養費の対象となりません。
※先進医療の場合、診察・検査・投薬・入院などの基礎部分は高額療養給付の対象となります。
同じ月で複数の医療機関にかかった場合
高額療養費の対象となる自己負担額は、受診者別、医療機関別、入院・通院別で算出されて、1レセプトあたり21,000円以上のもの(70歳以上の方は受診者別、入院・通院別で全部の自己負担額)が対象となります。このため、対象となる自己負担額を合算して、自己負担限度額を超えた部分が高額療養費として支給されます。
所得区分 | 自己負担限度額(月額) |
標準報酬月額83万円以上 | 252,600+(総医療費−842,000円)×1% |
標準報酬月額53万円〜79万円 | 167,400+(総医療費−558,000円)×1% |
標準報酬月額28万円〜50万円 | 80,100+(総医療費−267,000円)×1% |
標準報酬月額26万円以下 | 57,600円 |
低所得者(住民税非課税世帯など) | 35,400円 |
傷病手当金
病気やケガなどで働けず賃金・給料が受けられなかった場合において、連続して勤めを3日以上やすんでいるときは、4日目から1年6ヶ月を限度として支給されます
(支払開始日以前12ヶ月の各標準報酬月額の平均額)÷30×2/3
会社より賃金・給料が一部あるときは上記(支給対象金額)−(賃金・給料)の額が支給されます。
出産育児一時金
被保険者が妊娠4ヶ月以上の出産をした場合、1児につき42万円が支給されます。
被扶養者が出産する場合は、家族出産育児一時金が支給されます。
出産手当金
出産のために働けず賃金・給料が受けられなかった場合、支払開始日以前12ケ月の各標準報酬月額の平均額÷30×2/3相当額が支給されます。
出産の日(予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日までの間支給されます。
出産の日が予定日より遅れた場合、その遅れた日数も支給期間に含まれます。
FP1級・CFP®の追加知識
短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大(H28年改正)
社会保険が適用される人の範囲が拡大され、所定労働時間または所定労働日数が通常の社員の3/4未満であっても、次の1〜5に該当する場合は、厚生年金保険および健康保険に加入することになった
1,週の所定労働時間が20時間以上
2,賃金が月額88,000円以上
(賞与等1ヶ月の超える期間ごとに支給される賃金、通勤手当、精皆勤手当、時間外手当等は含めない)
3,雇用期間の見込みが1年以上である
4,学生ではない
5,下記のいずれかに該当すること
・一定の従業員が501人以上の特定適用事業所で働いている
・短時間労働者が社会保険に加入することが労使で合意されている一定の従業員500人以下の任意特定適用事業所で働いている
被保険者
個人事業主は、任意適用事業所であったとしても、自分に使用されるという形は想定できないため、被保険者とならない。なお、法人の代表者は、法人から労務の大賞として報酬を受けている場合には、被保険者となる。
被扶養者
認定対象者が被保険者の配偶者の場合
生計維持関係があれば被保険者と同一世帯に属していなくても被扶養者となることができる。被保険者と婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者は、婚姻の届出をいている配偶者と同様に取り扱われる。
認定対象者が被保険者の父母の場合
生計維持関係があれば被扶養者となることができる。被保険者と同一世帯に属している場合、父母は年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の1/2未満であれば生計維持関係があるとされる。
認定対象者が被保険者の兄姉の場合
生計維持関係があれば被保険者と同一世帯に属していなくても被扶養者になることができる。
産前産後休業
健康保険料および厚生年金保険料が免除される期間は、産前42日(多胎児の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間である。なお、第1子の育児休業期間中に第2子の産前休業期間に入るなど産前産後休業中の保険料免除と育児休業中の保険料免除が重複するときは、産前産後休業中の保険料免除が適用される。
- 事業主が産前産後休業取得者申出書を提出する
- 産前産後休業取得者申出書は産前産後休業中に提出しなければならない
出産後3歳に達するまでの子を養育する間の各月について、例えば勤務時間短縮等の措置を受けて働いたことにより標準報酬月額が低下した場合は、被保険者の申出に基づき、子が生まれる前(養育開始月の前月)の標準報酬月額をその月の標準報酬月額とみなして年金額が計算される。
傷病手当
要件
病気やケガで療養中であること
療養のため仕事に就くことができないこと(労務不能)
労務不能の日が継続して3日間あること(待機期間)
公休日や有給休暇を取得した日も、傷病手当金の支給要件である連続した3日間の待機期間に含まれる。
傷病手当金の支給を受けている期間中に会社から給与の支給がある場合は、その額に応じて傷病手当金の額が調整される仕組みになっているが、3ヶ月を超える期間ごとに支給される賞与については調整の対象とされない。
健康保険料および厚生年金保険料は、休職中であっても、原則として、休職前の標準報酬月額により算定された金額となり、給与であるか賞与であるかを問わず被保険者負担分も事業主負担分も免除されない。免除の対象となるのは、産前産後休業期間中と育児休業期間中に限られる。
雇用保険の保険料は賃金実績に保険料率を乗じて算出され、給与の支払いがなければ、保険料は発生しない。賞与が支給されれば、給与支給があった場合と同率で被保険者負担分が生じる。
出産育児一時金
健康保険における出産とは、妊娠4ヶ月(85日)以上の出産をいい、早産、死産、流産(人工流産を含む)を問わない。
出産日が出産予定日より遅れた場合は、その遅れた日数についても支給される。
高額療養費・限度額適用認定証
入院・外来にかかわらず、認定証を提示することで窓口負担を自己負担限度額までとすることができる。
認定証の有効期間は、申請書を受け付けた日の属する月の1日(資格を取得した月の場合は資格取得日)から最長1年間である。
標準報酬月額の変更により自己負担限度額の適用区分が変更された場合、認定証を返却しなければならない。その後、引き続き認定証が必要であれば、再度認定の申請を行う。
70歳になると後期高齢者医療制度に以降するまでの間、高齢受給者証が交付される。高齢受給者証には所得の状況などに応じた自己負担割合が記載されており、70歳以上の被保険者および被扶養者は、医療機関等で受信するときは、健康保険証と併せて高齢受給者証を提示する必要がある。
多数回該当
自己負担の軽減措置として多数回該当の制度の制度がある。治療を受けた月以前の12ヶ月間にすでに3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目からその月の自己負担限度額が引き下げられる制度。