概要
不動産、動産、有価証券などの資産(棚卸資産・山林を除く)の譲渡により得ることができる所得です。
譲渡とは、所有権の移転を表しており、一般的には有償による資産の売却が該当します。
非課税
生活に通常必要な動産の譲渡による所得(家具や衣服など)
時価30万円を超えるものを除く(書画・骨董・貴金属など)
※譲渡損失となる場合には、その損失は発生しなかったものとみなされます。
譲渡所得の区分と課税方法
譲渡所得は、譲渡資産の種類や保有期間に応じた課税を行うため、総合短期、総合長期、分離短期、分離長期、株式分離の5つに区分して課税を行います。
譲渡資産の種類 | 所有期間 | 区分 | 課税方法 | |
不動産・有価証券以外の資産 | 車両・ゴルフ会員権など | 保有期間5年以内 | 総合短期 | 総合課税 |
保有期間5年超 | 総合長期 | 総合課税 | ||
不動産 | 土地等・建物等 | 保有期間5年以内 | 分離短期 | 申告分離課税 |
土地等・建物等 | 保有期間5年超 | 分離長期 | 申告分離課税 | |
有価証券 | 株式・公社債 | 申告分離課税 |
事業用車両の売却に係る譲渡所得は、総合課税の対象です。
土地や建物などの申告分離課税される資産について5年以内か5年超かで短期か長期に区分しますが、取得日の翌日から譲渡日の属する年の1月1日現在までの所有期間で判定します。
所得金額の計算
資産を譲渡してことによる収入金額から、譲渡資産の取得費および譲渡に要した費用の合計額を控除した額(譲渡損益)が譲渡所得の金額です。
譲渡所得=収入金額−(取得費+譲渡費用)
収入金額
資産の売却代金(譲渡価額)が収入金額になります。
取得費
原則
譲渡した資産の取得に要した金額(取得価額)から資産価値の目減り相当額を控除した額が取得費になります。
土地・絵画・骨董品などは、資産の利用価値について目減りはないと考えられているため控除する金額はなく、取得価額そのものが取得費となります。
概算取得費の特例
取得費は、契約書や領収証などにより実際の金額を証明し、それらの証明書類を添付して確定申告を行いますが、次のいずれか大きい金額を取得費とすることもできます。
譲渡収入金額×5%(概算取得費)または実際の取得費の大きい金額
譲渡費用
資産を譲渡するために要した仲介手数料、運搬費や建物を取壊して土地を譲渡するための建物の取壊し費用、借家人を立ち退かせるための立退料などです。資産を譲渡するための費用ですから、譲渡資産の修繕費、固定資産税、その他の維持管理費は含みません。
総合短期・総合長期の具体的計算(車両・ゴルフ会員権など)
収入金額から取得費と譲渡費用を控除した額から、最高50万円の特別控除を控除して計算します。
同一年に総合短期および総合長期となる所得がある場合、控除額は総合短期および総合長期の合計で50万円です。この場合、50万円の特別控除は、それぞれの譲渡益を限度として総合短期・総合長期の順で控除することになっています。
他の所得と合算する場合には、総合長期のみ2分1に減額した金額を合算して総所得金額を計算する特例があります。
総合短期・総合長期の金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除(最高50万円)
総所得金額=総合短期(全額)+総合長期×1/2+給与所得など他の所得
分離短期・分離長期の具体的計算(不動産の譲渡)
所得金額の計算は、収入金額から取得費と譲渡費用を控除した額となります。
分離短期と分離長期は、他の所得と分離することにより、申告分離課税の対象となります。適用される税率は比例税率ですが、租税政策的な配慮の違いから分離短期と分離長期では異なる税率が適用されます。
分離短期
譲渡日の属する年の1月1日時点で所有期間5年以下の場合、短期的な不動産売買による地価の高騰を抑えるという観点から、土地等、建物等の譲渡益については重い税金を課税(重課)することになっています。
比例税率は39%(所得税30%+住民税9%)
分離長期
譲渡日の属する年の1月1日時点で所有期間5年超の場合、長期保有の土地等、建物等の譲渡を促進するという観点から、土地等、建物等の譲渡益については少ない税率を課税(軽課)することになっています。
比例税率は20%(所得税15%+住民税5%)
株式分離の具体的計算(株式・公社債・公募株式投資信託など)
所得金額の計算は、収入金額から取得費と譲渡費用を控除した金額となります。
株式の取得費用は、株式等を取得した金額+取得時の手数料等により計算しますが、同一銘柄の株式などを2回以上にわたって取得している場合には譲渡のつど、総平均法に準じた方法で平均単価を計算します。
株式分離(株分)は、他の所得と区別することにより申告分離課税の対象となり、比例税率(所得税15%+住民税5%)が適用されます。
株式等は一般株式等(非上場株式)と上場株式等に区分し、公社債は一般公社債(公募以外の私募で募集される公社債など)と特定公社債に区分してそれぞれ計算します。
NISA口座
住居者等が金融機関に開設した非課税口座に非課税投資枠(非課税管理勘定)を設けた年から、5年間に支払を受ける上場株式等の配当等および上場株式等の譲渡による譲渡所得等については、所得税が課税されません。
非課税投資枠に係る上場株式等の譲渡による損失金額は、生じなかったものとみなされますので、非課税投資枠以外で売却した株式の譲渡益と相殺することはできません。
対象資産 | 上場株式・公募株式投資信託、ETF、J-REIT |
非課税対象 | 非課税口座内の少額上場株式等の配当、譲渡益 |
非課税投資枠 | 毎年、新規投資額等の合計額で120万円を上限 (未使用枠は翌年以降繰越できない) |
保有期間 | 最長5年間、途中売却は自由 (売却部分の枠は再利用できない) |
非課税口座開設資格 | 口座を開設する年の1月1日現在で満20歳以上の居住者等 |
非課税口座開設数 | 一人1口座(複数の金融機関に同時に開設できない) 1年単位で金融機関を変更することができる |
つみたてNISA
家計の安定的な資産形成を支援するため、口座を開設する年の1月1日現在で20歳以上のひとは、少額からの積立・分散投資が可能となる非課税累積投資口座(つみたてNISA口座)の開設が可能です。非課税投資枠の上限は毎年40万円であり、非課税期間は投資をした年から最長20年間となります。
対象商品は一定の公募株式投資信託のみ(上場株式は不可)となり、通常のNISA口座と併用することができないため、選択適用となります。
ジュニアNISA
口座を開設する年の1月1日現在で20歳未満の未成年者についても非課税口座の開設が可能ですが、非課税投資枠の上限は毎年80万円になります。
未成年者口座(ジュニアNISA)では、3月31日時点で18歳である年の前年の12月31日までは、払出制限があります。
未成年者が20歳に達したときは、一般の非課税口座に上場株式等を移し替えることになります。
特定口座
個人投資家の納税にかかる負担を軽減するために設けられた制度である、証券会社や銀行などの金融機関ごとに一つの特定口座を開設することができます。
特定口座を開設した場合、証券会社や銀行などの金融機関が特定口座内における上場株式等の譲渡損益を管理し、年間の損益を計算した年間取引報告書を顧客と所轄の税務署へ交付するこtになっています。
NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
対象者 | 20歳以上 | 20歳未満 | |
金融機関の変更 | 可 | 不可 | |
取引主体者 | 本人 | 親権者 | |
非課税投資枠 | 年120万円 | 年40万円 | 年80万円 |
非課税期間 | 最長5年 | 最長20年 | 最長5年 |